Project Storyステアリングトルクセンサの生産移管と
新製品立ち上げプロジェクト

製造現場の声を織り込んだ、
真に作りやすい生産ラインの
構築に挑む。

設計図に描かれた製品を、実際のモノとして量産する。
それを可能にする生産ラインを構築するのが生産技術。
設備が動き、製品が次々とできあがる達成感を味わうまでの技術者の奮闘ぶりを、
自動車の重要保安部品である「ステアリングトルクセンサ」の生産ラインにまつわるストーリーを通してご覧いただこう。

  • 副部長

    生産技術1部副部長
    (生技1課 課長兼任)
    工学部 機械工学科出身
    2000年 入社

  • 担当係長

    生産技術1部 生技1課 担当係長
    工学部 物理工学科出身
    2018年 入社

  • 若手エンジニア H

    生産技術1部 生技1課
    理工学部 メカトロニクス工学科出身
    2019年 入社

Chapter1

はじまりは全社初となる、
重要保安部品の生産ライン移管。

軌道に乗った製品の生産をデンソーから引き継ぎ、生産終了となるまで供給を続ける。それが今回のプロジェクトのミッション。2018~2022年に生産移管が行われた製品の一つが、「ステアリングトルクセンサ」。クルマのハンドルを切る操舵力を検知してタイヤ角に変換する部品で、クルマの3大要素である、「走る・曲がる・止まる」の「曲がる」に関わる重要保安部品である。自動車部品の中で最上ランクの品質が求められる重要保安部品を、当社が手がけるのは初めてのこと。しかも生産数は月産50万個にも上った。

「デンソーの安城製作所から当社の本社工場へ設備を移し、安定生産できるまで、責任を持ってやり切ることがミッションでした」と語るプロジェクト管理者の副部長。部署内でも自動化設備の経験値が高い担当係長をはじめ、若手を中心としたメンバーが選ばれ、移管プロジェクトは着々と進行した。しかし、プロジェクトが中盤に差しかかった段階で、増産に対応する必要が生じ、新たにライン生産を増設。さらには、多様化する製品バリエーションへの対応も必要になった。こうした状況変化に対して、メンバーで議論を重ね過去に他製品で培った知見を活かし、治具やパレットの簡素化、バリエーションに対応するアタッチメントの開発に、設備メーカーと共同で取り組んだ。その結果、「どのバリエーションの製品でも流せる設備」を確立することができたのである。

このように、プロジェクトメンバーは一つやり遂げるたび高まる期待に次々と応え続けた。担当係長は、「導入時期によって成熟度が異なる設備を、どれも遜色ないよう稼働させてきた」と言う。こうした成果はデンソーから高く評価された。その後、デンソーから当社の東員工場へ、別の部品である「ホイールスピードセンサ」が移管されたのは、このステアリングトルクセンサ移管の成果が認められたことも要因の一つである。

Chapter2

次期型モデルの生産立ち上げに、
ゼロから挑む。

ステアリングトルクセンサの生産移管がまさに進んでいる最中、デンソーから我々へ新たな期待が寄せられていた。ステアリングトルクセンサの次期型モデルの生産だ。従来品のステアリングトルクセンサとは形状がガラリと変わり、サイズもコンパクトな製品。だが製品形状よりも大きく異なっていたのは、移管ではなく、デンソーでも生産の実績がない新規製品の生産設備を、デンソーと共同立ち上げする点である。2019年にスタートしたこのプロジェクトにおいて、副部長の下で実務の主担当を任されたのが、先の移管で仕事の基本を学んだ、当時入社2年目の若手エンジニア Hだ。

全部で5工程に分かれる生産ラインのうち、Hは、はんだ付けと基板分割の工程を担当。生産ラインの構想と設計はデンソーで行い、当社が設備を導入して生産を行うという分担の下、Hは二つの役割を任された。「一つは、製造や保全の担当者が従来品を扱う中で上がってきた『こうなればもっと作りやすい』という声を集約し、デンソーの設計部門や生産技術部門へ伝えて、製品の設計に反映すること。いわば、デンソーに対する当社の窓口です。もう一つは、デンソーの生産技術部門と同じ視点を持ち、設備仕様を検討する、生産技術エンジニアとしての役割です」。

いずれにしても、はんだ付けと基板分割の工程は、当社がこれまで手がけてきた既存製品の工程を踏襲する部分が多い。Hには、その知見を設備設計において発揮し、作りやすく生まれの良い設備を導入することを期待されていた。

Chapter3

製造の意見を製品設計に、設備に、品質に反映。

Hの仕事は、まずデンソーと打合せを行い、既存製品のはんだ付け・基板分割工程で起きた不具合情報を検討することから始まった。

そのうえで、「生産技術エンジニア」として、デンソーの試作棟へ赴いてはんだ付け工程の試作を実施。構想・設計を行った設備のスペックに問題がないかを確認していった。そして設備がデンソーワイズテックの本社工場へ納入されると、その実機を使って量産試作を行い、良品生産のための詳細な加工条件を探った。

もう一方の、「デンソーワイズテックの窓口」という役割で行った仕事の例を紹介しよう。はんだ付け工程では端子と基板をはんだ付けするが、一般的に熱容量が大きい物体は熱を横取りしてしまうため、はんだ付けに支障が出る。次期型製品の基板上にある、電位をゼロにするグラウンドの配線に使われた、断面積の大きい銅箔が、まさにそれだった。そこでこの部分での熱の消費を抑えるよう、基板のレイアウトを検討してもらいたいとデンソーの製品設計部門に提案。配線の一部を細くする設計変更が実現し、熱のロスが少ない工程となったのである。

基板分割工程では、Hはデンソーに対して寸法精度の要求緩和を求める働きかけを行った。この工程では、大きな1枚の板の上に77個分の回路がプリントされた基板を、1個ずつに切り分ける。1個1個の回路の周囲には「切りしろ」があるが、他の部品と物理的に干渉しないなら、できるだけ要求精度を緩和してもらった方が不良品を減らせる。ただ、量産が始まってしまえば容易には変えられない。それを彼がタイムリーにデンソーへ提案し、製造現場の要望に応える結果となるよう流れを作ったのは確かだ。

Chapter4

若手中心のチャレンジが、
個人の成長と会社の競争力を生む。

次期型製品には担当係長も携わり、製品の電気的特性に関して豊富な知見を発揮した。そして2022年6月、彼らの知見が盛り込まれた生産ラインが立ち上がり、無事に量産が始まった。現在、Hはこの経験を活かして、次期型製品の2号機ラインに取り組んでいる。また担当係長は、先に移管・増設したステアリングトルクセンサの生産ラインを相手に、さらなる生産性向上を目指し進化させるべく取り組み続けている。2023年度からは、協働ロボットとAIを活用した自動化を大テーマに掲げ、挑戦中だ。

副部長によると、そもそも彼らにステアリングトルクセンサの生産ラインを任せた大きな理由は、「当時は生産技術の人数が少なく、急いで若手を集めたため」だそうだ。しかし心の底にはこんな期待があった。「会社として競争力をつけていかなければならない今、ちょっとした改善ではなく抜本的に新しいラインを創る仕事に若手がチャレンジすることが、彼らの育成とモチベーション向上につながる」。

事実、Hは経験値の浅い段階でこのようなプロジェクトに携われたことで、生産技術の仕事とは何かという大きな学びを得たと言う。また、デンソーの生産技術部門と共同で進める経験を通じて、原理原則に基づいて仕事のプロセスを組んでいくデンソー流のアプローチ方法に刺激を受けたとも話す。そして、デンソーワイズテック独自のアプローチ方法の利点にも気づいたそうだ。「デンソーワイズテックが目指しているのは、使いやすくモノづくりしやすい生産ライン。現場寄りの視点こそが、当社のよさであり、カラーだと思います」。新たな知見と視点を得た、Hの挑戦は続く。

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